ロレックスの信用性
危機は住宅危機と認識されていた面もある。
すなわち、多くの人々がその住宅を手放さなければならない悲劇が広範に起こることが問題だと認識されていた。
それに対して政府は、FHAによる住宅ローンの借り換え促進など、住宅の差し押さえが防止されるような対策を工夫した。
ただ、民間団体である主導する面が大きく、金利を五年間凍結、返済遅延者に手紙を送る、二四時間対応の無料のカウンセリングのホットラインをサポートするlなども含まれた。
その後も連邦準備理事会は政策金利を矢継ぎ早に引き下げ、ニ○○八年の一月までにニ・ニ五%ポイント(五・二五%←三・○%)引き下げた。
政府と議会も約一六○○億ドル(GDPの一%超)の景気対策を成立させた。
その後、○八年三月、JPM・TのB・Sの買収に際し、FRBが資金供給を行うことになった。
これは実質的にFRBが民間企業を補助することと同じである。
FRBはさらに政策金利を引き下げ、四月までにニ・○%となった(三・○%←二・○%)。
ただし、資源価格の高騰でインフレ圧力が生じていたことにより、これ以上の金融緩和は停止されることになった(一○月に再開)。
さらに九月、財務省は、プライム住宅ローンを購入して市場に流動性を与えている政府系の住宅金融機関ファニーメイ(国連邦抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の資産が傷んでいるとして公的管理下に置いた。
ファニーメイとフレディマックは、債券を発行して住宅ローンを購入しているが、その債券にはアメリカ政府の暗黙の保証があり、アメリカ国債と同等の信用力を持っていると見なされ、各国政府、中央銀行、機関投資家が大量に保有していた。
そこで、ドルの信用を維サブプライム住宅ローンに関連する損失が膨らんだために経営危機に陥ったL・Bは、救済を巡る交渉が決裂し、二○○八年九月一五日には連邦破産法二条(日本の民事再生法に類似)の適用を申請し破綻した。
同日、BがMを買収した。
翌一六日にはサブプライム住宅ローン関連の損失拡大で資金繰りの悪化に直面したAIG(世界的に事業を展開する保険会社)をFRBが異例の救済に踏み切った。
AIGがCDSのプロテクションを大規模に引き受けていたために、市場に悪影響が広がるのを防ぐことが背景にあったといわれている。
九月二○日、ブッシュ政権が最大七○○○億ドルの資金を持つ不良資産の買い取りプログラム、TARP(不良資産救済プログラム)などの対策を発表した。
九月二一日には、FRBが投資銀行であるG・SとM・Sの銀行持株会社への転換を承認した。
投資銀行は、短期の債券を発行して長期の投資を行っているが、債券は預金ではないので銀行監督に服さない。
預金は政府に保証されているがゆえに安価な資金であるが、それゆえ預金保護のために、レバレッジの制約など政府の規制を受ける。
投資銀行は、それを嫌って独自の業態を維持していたが、自ら規制の枠組みの中に入ることを選んだ。
安価な資金持するためには、政府がファニーメイとフレディマックを公的管理下に置き、暗黙の保証の程度を高め、その債券の信用度を高めるしかなかった。
FRBからの流動性の供給を受けることができるからである。
これで投資銀行という業態は消滅した。
一○月にはW・FがWを救済買収した。
ブッシュ政権の不良資産の買い取りなどは愚かで強欲な銀行を税金で救うものだと反対していたアメリカ議会も、危機の進行を見て、一○月三日、預金保証の上限引き上げ、減税などを含んだ景気刺激策を追加して可決した。
一○月八日には主要国が協調して金利を引き下げた。
アメリカの政策金利は一・五%となった三・○←一・五%。
一○月一四日には、七○○○億ドルのうち、二五○○億ドルを、不良資産の買取ではなくて金融機関への資本注入に使うことが発表された。
同時に、決済性預金の全額保護、企業が発行するCPの買い取りも決定した。
結局、議会の承認を必要としない三五○○億ドル分については不良資産の買い取りを事実上断念し、ノンバンクを含めた資本注入対象を拡大することになった。
FRBは政策金利をさらに下げて一%とした(一・五%←一・○%)。
さらに、公的資金の注入にもかかわらず、経営の先行きに対する不安が拡大したシティグループに対しては、ニ月ニ三日、財務省やFDIC(国連邦預金保険公社)、FRBが救済策を発表せざるをえなくなった。
具体的には、政府が約三○○○億ドルの不良資産を保証する、TARPからニ○○億ドルを追加資本注入する、その代わりに役員報酬や既存普通株への配当が制限される等である。
その後も断続的に金融機関に対する資本注入が発表されるなど、依然としてアメリカの金融危機は続いていると言えよう。
ニ○○八年に破綻した銀行の数は二五行に達し、一九九三年以来、一五年ぶりの多さになったが、一九八○年代後半から九○年代初めにかけてのS&L危機の際の破綻件数の一○分の一未満に過ぎない。
ただ、貯蓄金融機関最大手のW・M(資産総額三○七○億ドル)のような過去最大の破綻も発生したことから(それまでの最高額は一九八四年に破綻したコンチネンタル・イリノイの四○○億ドル)、破綻金融機関の総資産合計は約三七○○億ドルを上回る。
経済規模と比較しても(例えばGDP比)、S&L危機並みである。
また、経営破綻を免れてもリストラは避けられず、ニューヨーク州の試算によると、ニューヨーク市の金融セクターの雇用はニ○○九年一○月までに四・八万人減少すると予想されている。
ニ○○八年九月のL・Bの破綻が、その後の急速な景気悪化のきっかけであったのは間違いない。
では、L・Bを救えばよかったのだろうか。
B・Sは救済されたのにLが救済されないのはアメリカ政府の方針に透明性と一貫性がないという議論がある。
しかし、透明性と一貫性をもって救わないことはできるが、透明性と一貫性をもって救うことはできない。
どういう状況であれば救われると分かれば、すべての企業がその基準を満たすように行動するだろう。
結局、すべての企業を救うはめになってしまう。
これはとんでもないモラル・ハザードをもたらすことになる。
混乱を避けるために救済するしかないのであるならば、いつ救済されるかが分からないほうが望ましい。
危機の原因は、アメリカの金融機関が不良債権を抱え、それゆえに金融機能が低下したことである。
それであるなら、金融機関の不良債権を税金で埋めてやれば、金融機能は復活する。
そうすべきだとなるだろうか。
これでは、危機を起こしたもの勝ちになってしまう。
納税者は納得できないだろう。
金融機関を助けるのであれば、自動車会社を助けるべきということになってしまうし、およそすべての産業が救済を求めることになるだろう。
これでは市場経済は維持できない。
Lの破綻が、その後の景気悪化をもたらしたという論調が強いが、その前から経済は停滞していた。
実質GDP、雇用、消費の成長率は、九月以前からマイナスになっていた。
しかも二○○八年四〜六月期の実質GDPがプラスだったのは、B政権が同年四月末から行った、総額二三○億ドルの戻し減税があったからである。
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